脂肪吸引について学ぶ

脂肪吸引による健康への影響

死亡事故
脂肪吸引は生命に対するリスクを伴う行為である[1]。80年代には麻酔科医の管理下でないにも拘わらず全身麻酔下で止血剤を用いずに吸引を行なっていたため、麻酔事故と出血多量が死亡事故の主原因であった。チュメセント法の採用により、出血多量による事故は減少したが、局所麻酔(特にリドカイン)と止血剤(特にアドレナリン)の併用による死亡事故が生ずるようになる(過剰投与やアナフィラキシーショックによる呼吸不全や心不全)。またチュメセント法により吸引可能な脂肪の量が増えたため、脂肪塞栓などによる血栓症・呼吸不全による死亡事故を生ずるようになった。更に、その後に展開してきたカニューレの高機能化(PAL、ジェット水流、超音波)は却ってカニューレに因る腹膜損傷を容易にし、腹膜や腸などの損傷による感染症・多量出血などによる死亡事故をもたらすに到っている。
東京都豊島区の品川美容外科池袋院で2009年、脂肪吸引手術を受けた女性が死亡した事故。不適切なカニューレ操作により女性の腹壁と腸を損傷し、2日後に脱水症で死亡させたとされる。執刀医は業務上過失致死罪で起訴され、2012年8月に有罪判決が下された(禁錮1年6月、執行猶予3年)。なおこの事件に関連して、当時同外科顧問だった警視庁OBに捜査資料のコピーを手渡したとして、元同庁捜査1課警部が地方公務員法違反罪で起訴され、一、二審で懲役10月の実刑判決を言い渡されている(2012年11月21日上告棄却により確定)。
施術それ自体に因る一般的リスク
感染症(処置に伴う熱傷、カニューレ挿入・脂肪組織の吸引に伴う内部組織の損傷による)
出血、また神経・皮膚・組織・臓器に対する損傷(同上、脂肪吸引手術による死亡事故の主原因)
脂肪塞栓症(吸引によって遊離した微小な脂肪塊が血栓として血管を詰まらせる)
ショック症状とそれによる心停止・意識障害・痙攣・悪性高熱・組織壊死(麻酔薬・止血薬の過剰投与やアレルギーによる)
脂肪の吸引結果が美しくない(吸引部分自体が不揃い or デコボコの皮膚 etc.)
皮下脂肪の減少に因る一般的影響とリスク
腹部脂肪除去後の乳房肥大(これは特に男性では問題になりうる)。
内臓脂肪・異所性脂肪の増大(肥満に伴う健康問題はこの両者によって惹き起こされる)。
脂肪吸引はそれによる体重減少や脂肪細胞数の減少に拘わらず、メタボリック症候群の改善をなんらもたらさないことが知られており、肥満による医学的問題の解決にはならない(その意義は純粋に美容目的に限られる)。また、皮下脂肪細胞を除去することによって、余剰摂取カロリーが脂肪として蓄積される先が、脂肪細胞が除去されていない部位の皮下脂肪・内臓脂肪・異所性脂肪に転移することに伴う問題が生じうる。

脂肪吸引技術の進歩

体内式超音波脂肪吸引(第一世代超音波)
先端から超音波を発する管を用い、脂肪に直接超音波を照射して脂肪細胞を破壊し、吸引していく。初期のものは超音波の出力が強く、内側から皮膚を傷つけたり(火傷)、炎症が長引く事があった。皮下脂肪の約70%の除去が可能。
体外式超音波脂肪吸引(第二世代超音波)
皮膚表面から超音波を当てて脂肪を柔らかくし、カニューレで吸引していく。純粋な初代WET法よりも体への負担が少ないため普及した。しかし、超音波を当てる際に表皮を火傷する可能性がある等のデメリットも多かった。皮下脂肪の約70%の除去が可能。
PAL(パワーアシスト)脂肪吸引
カニューレ(吸引管)自体が振動し、脂肪を破砕、吸引しやすくする方法。ハンドピースが大きいなど難点も多く、今ではほとんど使われない。
エルコーニアレーザー脂肪吸引
エルコーニアレーザーというレーザー光を皮膚表面から数分間照射して脂肪細胞を柔らかくし、カニューレで吸引していく。脂肪が柔らかくなるため初期の方法より体への負担が少ない。エルコーニアレーザーは脂肪吸引に使用する低出力レーザー機。FDA認可。皮下脂肪の約70%の除去が可能。
ボディジェット脂肪吸引
カニューレの先から出るジェット水流で脂肪を分解し吸引していく。水の力で組織を分離(脂肪細胞間、及び脂肪組織と筋肉組織など)するため、周辺組織への負担、体への負担が少ない。FDA認可。皮下脂肪の約70%の除去が可能。
ベイザー脂肪吸引(第三世代超音波)
カニューレの先端から出る特殊な振動エネルギーであるベイザー(VASER)波で脂肪を乳化、また硬い結合組織も軟弱化させ吸引していく。ベイザー波には止血効果もあり、体への負担が少ない。ベイザー波を用いた脂肪吸引により安全に皮膚直下の浅い層の脂肪まで除去でき、皮膚の引き締め効果もある。FDA認可。皮下脂肪の約90%の除去が可能。